VISION.05
ひだかたけし


陰惨な声刻む泥舟、
あっという間に競り上がる青白い氷山に乗り上げ
怜悧なナイフで自らの喉笛をかっ切る。
これを潮時と終わりにしたかったのだ始まりにしたかったのだ、
深紅の血潮はもはや抑えようもなく漆黒天高く噴き上げ
ヒュウヒュウ響く無上の歓喜と無情の苦痛の木霊に打ち震えながら。

薄暗い渡り廊下 雨に煙る灰色の校庭
いつまで経っても迎えに来ない保険医
疼き続ける後頭部のべっとりと
血の滲む包帯を壊れた右腕で押さえ込む、
独り耐え続け恍惚として来るまで。



自由詩 VISION.05 Copyright ひだかたけし 2016-04-15 19:24:15
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