いつか大人になる少女達へ(おもいで)
からふ
口笛が遠くまで聞こえるのは
まわりに誰もいなかったからだ
分かっていたんだろう
少女よ
どこにも行かなくていい
君が知ってる誰もかもは
どうせ君の知らない場所で笑っている
白く細く
くもの糸のような息を吐きなさい
どうせどこにも届きやしないが
それはそれでいい
(ゆっくりと
ぼやけた夜のヨーデルが
右頬をすり抜けていった
木々は倒れないように
ただじっと数をかぞえている
きっとそれらをゆっくりと包んでいく)
朝露を舐め続けて寄り道を忘れないで赤いリボンを外さないでくだらない
約束をくだらないと言わないで絵本を破り捨てないで雨を嫌いなままでい
てスキップをやめないで余計な物で飾らないで楽しそうに笑って夢で怖が
ってみせてよ、ねえ、それだけでいいから
枯れた花じゃ
押し花は作れないので
その時は惜しげもなく君を殺すよ
少女よ