シャッフル /【幻想30】作品
ハァモニィベル
*
シャッフル
雨合羽の内側みたいに湿った霧の夜
水槽に堕ちた帽子のように少しずつ想い出す
刻まれたまま床に散乱している時間
ボロボロに傷ついた
一枚一枚を拾い集め
飴のように粘りつく記憶が
繋いでいく連続……
音楽は何処に?
電池切れの
玩具の楽器といっしょに
ゼンマイが壊れたまま
押入れで眠る
幸運の映写機のとなり
幾つもの景色のなかで、
沢山の雨滴が接着剤のように
窓に貼り付いたまま取れない。
バッグを抱えたご近所さんが二人、船出してゆく。
その後をゆこう。
腹痛を抱えた白鯨のように。
明るいデパートの地下を
泳いでいこう
切り札のない一○八枚のカードを
並べて迷いながら
壺のなかの血のようなエーテルを
ひと匙垂らした
牙でできた勾玉よりも
薔薇の缶詰を買うために
*
《 シャッフル 2016年四月五日 ,幻想詩30への企画投稿, 》
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