海を噛む
あおい満月

その肩を掴んで、
どこまでも歩いた。
思念が浮かんでは、
沈みを繰り返した。
私は痛む胸を押さえながら、
水のなかに深く沈む。

たくさんの目が、
目のなかの目を見つめている。
目のなかに風が吹き抜ける。
私の目も、
風のなかに浮かんでいる。
手のひらのなかの目は、
あたたかい海を流している。

耳は耳のなかに、
海を噛んでいる。
耳のなかの海は、
かたい殻を孕み、
雨にからめとられ、
乳児を抱くようにまるくなる。
耳はただ、
繰り返される胎動だけを聴いている。

その肩を掴んだ手が、
ふと歩みを止めた。
思念の先が音もなく割れて、
ことばにならない音が、
とめどなくあふれる。


自由詩 海を噛む Copyright あおい満月 2016-03-27 14:36:57
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