葬儀の後で。
梓ゆい

昨日と変わらない庭の枯れ枝。
昨日とは違う枯れ枝のような手足。

「親は子供よりも先に死ぬ。」と理解をしたら
看取るのは最大の親孝行だと言い聞かす。

昨日と同じ朝の訪れ
いつまでも起きてこない奥座敷の父親

布団に包まり
父が死ぬ直前まで使用した毛布を抱きしめた
葬儀の前夜

明日の今頃は骨になっていることを思い浮かべ
父の遺体を引きずりながら
家から逃げ出す夢を見る。

並んで眠りながら
内臓が腐り/肉が溶けて/目玉が垂れ落ちて
父親が壊れてゆく様を見届けたい。

白い箱に収まるこなごなの欠片をひとつ口に含んだら
苦くて・苦くて・甘い炭酸水で口を清める。

「人骨は良い。」とどこかで読んだ遠い昔
それは嘘だったと思い知らされた。

父親が帰ってきた日は
一緒に鍋を囲みたい。

父親が帰ってきた日は
並んでTVを観たい。

父親が帰ってきた日は
車から降りて駆け寄りたい。

父親が帰ってきた日は
骨壷を抱きしめて
許される限り泣いていたい。


自由詩 葬儀の後で。 Copyright 梓ゆい 2016-03-15 19:02:55
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