父の顔。
梓ゆい

(冷たい・硬い・重たい・臭い)
別れを告げた父の姿だ。

私は離れたくは無かったのだが
参列者の手前
抵抗するわけにも行かず
黙って棺のあとを追う。

山のへりに並ぶ猿たちの群れ
まるで行列を見守るかのように
大きな瞳をこちらへと向ける。

「余計な一言はいらない。」
最後に交わした父との会話は
また帰っておいで。
ベッドの上に腰を下ろし手を振る様は
もうそろそろ行くよ。と
言っているかのように見えた。

皺一つ無く敷いた新しい布団
ラップに包んだ少し厚めの刺身数切れ
綺麗に飾りつけた季節の花

「父はもう、嬉しそうに笑わない。」




自由詩 父の顔。 Copyright 梓ゆい 2016-03-15 16:01:27
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