孵化する声
あおい満月

喉のおくに、
何かがからみつく。
潰れた声がでる。
声は声ではなく、
毛を生やして、
毛孔から這い出てくる。
たくさんの、
得たいの知れない、
毛玉が這い出てきて、
私をとりかこむ。

私の手や、指、
ひとつひとつが毛になって、
私は虫になる。
虫から虫が出てくる。
いつか見た夢のように、
私は口から虫を出す。

口から生まれた虫たちは、
誰かの口にたどりつく前に
死んでしまう。
虫のからたは、
透明になる。

透明になった私は、
重力だけをもてあます。
私にすみつかれた私は、
空になるまで、
内蔵を食い荒らし、
透明になって消えていく。

私は何度も虫になる。
爪の先がまだ、
枯れ葉を掴んでいる。




自由詩 孵化する声 Copyright あおい満月 2016-03-08 20:52:11
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