かぐや姫とベンジャミン
ベンジャミン

僕の名前はベンジャミン。
昨日の夜、月をながめていたら、かぐや姫が降りてきた。
あなたを迎えに来ましたなんて突然言われても、僕は困ってしまうので丁寧に断ったのだが、かぐや姫はやけに必至で、なんでそんなに必至なのか尋ねてみた。かぐや姫はしばらく言いずらそうにしていたのだが、一人でうなずくと静かに話し始めた。月は引力の作用で、放っておくと地球にぶつかってしまうそうだ、それをくい止めるには、人間の精神エネルギーを反引力にして均衡を保つ必要がある。そのための人間を月に連れて帰るのが、かぐや姫の任務なのだという。信じがたい、かぐや姫の話もそうだが、そもそも僕の精神エネルギーなんて反引力になるのか?って、素直に聞いてみた。すると、あなたは人に好かれる方ではありませんよねって冷静に言われしまった。ショックだ、しかし本当だ、あなたは社会からも必要とされてませんよねって、追い討ちかけるなよ!
僕はちょっと泣きそうになりながら、あぁ でも、そうやってみんなの役に立てるなら、月に行ってもいいのかな、ってぽつりと呟くと、かぐや姫の顔色をうかがってみた。すると、かぐや姫は目にいっぱいの涙を浮かべて僕を見ている。やはりあなたを月には連れて行けません、振り切るようにそう言ったかぐや姫は、窓から身を乗り出そうとしていた。僕は慌てて引き止めて、そのわけを尋ねようとしたけれど、僕が聞くよりも早く、あなたを愛してしまったから、、、と、かぐや姫はかすれた声で呟いた。だったらなおさら一緒に行こうじゃないか!って僕がくいさがると、それでは引力が増すだけです、なんてさ・・・
悲しすぎるじゃないか。

かぐや姫は一人で帰ってしまった。
僕はあいかわらずの僕で、誰に好かれるわけでも、必要とされているわけでもない。
でも、知っていて欲しい。月が地球に落ちないのは、きっと僕のおかげなんだ。
月が近づけばいいと願い続ける僕に、月はけして落ちてこないから。
もしかしたら、それがかぐや姫の務めだったのかもしれないね・・・




散文(批評随筆小説等) かぐや姫とベンジャミン Copyright ベンジャミン 2005-02-22 10:18:37
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