もう、キット雪の日
らいか
雪が降ってきた、白い雪はどれも同じスピードで落ちてくる
その雪をゆらす風は無い
そんな中、電車を待つ一人の女性の髪に、雪が振り落ちていくのが見えていた。
ホームの白線の内側の黄色いタイルのあたりに立つ後ろ姿はまだ若い。
寒さに厳重な防衛ラインを張った服装は、膝丈まであるコートにそれにブーツ、マフラーは首を何回か回っている。
落ちた雪は髪の毛の上に落ちては半分位溶けて、そのマフラーにもツブツブくっついていた。
綺麗にとかされ、流れるそのすこし栗色の髪の毛はマフラーに締め付けられすこし苦しそうだった。
ツムジに落ちたらさぞ冷たかろうと、雪の軌道を目で追いつつその瞬間を待ちわびていた。
風が吹くと、雪のツブテから頬を守ろうとその人は半分振り返る。
慌てて別の方に目をやり首を振った。
電車がくるまでの時間そんな事を何度か繰り返し、そろそろ寒くなってきたころ
その女性はホームの淵からこちらのベンチに背を丸めて歩いてくる。
「となり、いいですか」
「どうぞ」
びっくりして荷物を置いた隣のスペースを空ける。
はっきりみえなかったけどきっと美しかった。
隣を振り向けば目が合う。
緊張するので、向かいのホームに自分の気をそらせていた。
そろそろやっと待っていた電車が来た。
そのひとは、どの駅で降りるかわからないけど僕は次の駅でおりた。
雪が降るとまたあの重装備が見れるんじゃないかという好奇心に駆られ、時々、列車を見
送ってみたけど
顔もはっきり見えなかったその人は、春になった今、もうきっと逢えないんだ。