加工肉自動人形
日々野いずる

あわただしい厨房からようやく出てきたカキフライを
口蓋を火傷しながら詰め込み食べ
待たされた客はそれでいて味が分かった顔で頷きながら
口ぎたない罵倒もついでに口から飛び出して

熱々の油に浴びせかけられた
水のように爆発しかけた感情は誰にも向かわせられず
ぐつぐつと自分を煮込んでいる苦

いい加減な論理の展開。と観察している
自分が普段煮え湯を飲んでいるからって他人へ苦言を飲ませようとする
そうやって人に負担をかけたがる生き物として生まれついたのは
誰にも止められなかったことであって
酒は本性を暴露するのならそれはそういう事なのだろうと
笑顔を作る

漢字を忘れひらがなのようなしゃべり方で
注文を繰り返し
注文を繰り返し
注文を繰り返し
要望に応える必要のある世の中だ
復唱を強要されるのに飽き飽きして、腹も立たなくなった

加工された料理を食べ
加工され完成した人あたりの良さを得たのに
鬱々と目が閉じていくのは何故か
過程で削ぎ落とされた不要さは、重圧として天から降りてくるのか
雨が降って体を重くして
より目蓋を重くし
もう目は開けていられない
暗闇の中、意識に何も乗せない自動人形は
笑顔で注文を取る


自由詩 加工肉自動人形 Copyright 日々野いずる 2016-02-20 22:07:29
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