沸点六度八分
もり

乾燥麺のように乾いた心を3分で解きほぐしたいと思ったなら
ゴングが鳴るその瞬間には沸点をむかえていなけりゃならないはずだけど
「おいおい何だってまだ鍋に水もはってない?! 」
てゆかガスが止まってる
まるでバッテリー上がりのバイクだね!
っていいかげん比喩はやめろ
てめーがものぐさな、だけ
信号が青に変わった瞬間には
ほとんど横断歩道を渡りきっていたお前が
なぜ今 チャンスの配給には従順な列をなす? よく目を凝らしてごらんよ
その列はまったく前へと進んじゃいない
「塞いで閉ざしてる」そう言われた現代の悩める若者のイヤホンの片一方はあの日からずっと壊れたまま
だからちゃんと聞こえてます 舌打ち

このなかで 「セックスしたいなう!」って叫ぶように呟きたい
ひとがどれくらいいるでしょう
とはいえこんなぼくも
本当は詩よりも叫びたいことがある
彼女キボンヌ!
たったひとりのきみキボンヌ!
詩なんか理解してくんなくたっていい むしろ詩を忘れられるように歩いてみたい ひとつずつ
ひとつずつ 脱ぎ捨てていくように
セーヌ川のほとり
ぼくは上着を流して
エッフェル塔の先っぽに
Tシャツをひっかけて
きみはシャンゼリゼ通りで思い出や後悔や希望の類が詰まったカバンをひったくられて
ふたり一緒に
ルーブル美術館で残りのすべてを
脱ぎ捨てる
きっとそんな
きっとそんな
ネイキッドな二人に
モナリザはほほ笑んでくれるはずさ
そうして生れた姿のまま
手をつないで
凱旋門をくぐって
コンコルド広場で
本物の愛の革命を起こそうよ!
きみはきっと実在の
ミロのヴィーナス
ぼくは ぼくは・・
ぼくは きみの かげ・・?

「休みの日はいつも何してるの?」
合コンで 少し気になる女の子がぼくに聞いた「えーっと、」
「し・・しを・・塩とか集めたりしてるかな!岩塩とか色々。グルメでさ~」 「へー 変わってるね」
どうして詩を書いてますと
言えなかったんだろう
どうして詩を書いてますと
言えなかったんだろう
どうして詩を書いてますと
言えなかったんだろう
詩より大事なものはある
だけど 今のお前は ぼくは
「詩キボンヌ」
だってわかってるだろう!?
昔いっしょにさんざんバカやった仲間も大人になって
突き刺さる一言へ何も返せなかった
あの空白の鉤括弧を埋めるべきは今だろう!?
「詩なんか書いて食っていけると思ってんの?」ちがう
もはや詩を食ってるんだ
道草を食ってる
口いっぱいに頬張って
涙を流して歌ってるんだよ
乾燥麺のように乾いた心を3分でときほぐすような歌を歌おうと
もがいてんだよ
おいパリ!
夢見させてんじゃねーよ!
おいパリ!
ちんこでけーからって
いい気になんなよ


自由詩 沸点六度八分 Copyright もり 2016-02-18 21:46:54
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