プリオーガナイザー
塚本一期
愛する人の子どもを
この手に抱いてみたかった
だからぼくは
家族のCMが嫌い
冷たい水で、一人分の米を研いで
スイッチを入れよう
生きるために
銀色のコンパクトカーの中で
練炭を焚くことを
何度も頭に思い浮かべながら
鳴らない電話を見つめて
遺書を書いていよう
「ぼくには家族がいない」
帰る場所が無いんだ
おお、家族が欲しかった
ぼく家族が欲しかった
ぼく家族が欲しかった
笑って いたかった
いたかった 痛かったよ
痛いよ おお、痛いよ
どこかに誰かがいないかって
探したよ
ほら、見てごらん
腹の内側にこんなに人間がぎっしり
詰まってる みんな覚えてる
でもみんな忘れちまうんだ
ちまいたいよ
ほう……さみしかった
嫌になっちまった
ほんの一人きりでいい ほんの一人きりでいい
って、贅沢なんかいわなかったのに
さ 言わなかった
のに