憐憫
ヒヤシンス


 嘘を重ねた悲しみが川面を伝う。
 橋の欄干は赤錆びて、真昼の幻想は鮮やかだ。
 夢見がちな私の瞳は川岸に佇む鴨を見て、
 何も聞かないあなたの瞳は私の真実の気配を探る。

 あなたは何もかも見透かす力を持つ。
 私の魂の暗黒部に貴い光はあるか。
 幻想の中で真実は語られる。
 その真実に存在価値はあるだろうか。

 不確かなものへの愛情はあるか。
 望みを断ち切られる覚悟はあるか。
 他人を愛する勇気はあるか。

 穏やかな川の流れに浮かぶ憐憫の情。
 過ぎ行く時が夕暮れを呼び、鴨は去った。
 新たな嘘の雫が私の頬を静かに伝う。


自由詩 憐憫 Copyright ヒヤシンス 2016-02-13 02:12:16
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