凪羽
木立 悟




白を白に放ちながら
白は白に落ちてくる
誰もいない冬の隅に
放ち 放ち
放ちつづける


空をゆく窓の内から
なかば水没した都市を見つめた
四つ足の群れがつくる水紋
緑に緑にざわめく水


足の震え
不可思議な動力
床の下には
無言の水たち


光の細胞
涙のなかの火
こすり こすり 燃え上がる
かつて在った重なりの影


夜の蒼と原
鉄線のむこうに遠去かる声
色の波 また色の波
途切れることのない水のにおい


地平線の火に鳥が群がり
草に覆われた中州は激しく
震えと影にまたたいている


水鳴りと共に
建物が倒れる
渦と紋をついばむ光
金の瞳に見え隠れする灰


外は動かず
内だけが動いている
水没した街の緑の上を
窓はゆうるりと飛び去ってゆく






















自由詩 凪羽 Copyright 木立 悟 2016-01-25 12:44:38
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