警告
あおい満月

朝の胎動が谺する、
夜のなかで、
私はゆっくりお湯を飲む。
私のなかだけにしか、
あてはまらない鍵をゆっくりと
舌で転がしながら。
朝を待ちながら、
カプセルに入る。
光の囁きに目をあけると、
昇りきった朝陽が、
私の髪を撫でる。
私はその時に思う。
ああ、生きていたんだと。

目覚めた瞬間に確かめることは、
私がぶれてはいないかということ。
私がぶれると、
月が砕け散る。
思考回路は、
見えない会談を昇り降りする。
私がぶれると、
いつまでも肩が冷たい。
私がぶれると、
私がぶれると、
その口をどこまでもぐちゃぐちゃに
裂いて甘い歯を貪り続けてしまう。

眺めのいい部屋と小さな贈り物は、
私を一番安らげる場所へと手招く。
どうしても明日のことは、
わからないから、
未完のパズルの一欠片を、
握ったまま、
佇んでしまう。
どんなに安らいでいても、
私はいつも何かが欠けたまま。
誰もがわかっていて、
私だけが知らない。
※「君の知らないところで世界は動く」
そんな言葉が、
警告のように、
脳裏を反芻する。


※片山恭一著『君の知らないところで世界が動く』より。


自由詩 警告 Copyright あおい満月 2016-01-24 22:46:39
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