静かな夜半のことだ
いねむり猫

静かな 夜半のことだ

やせ細った月が 薄く流れる雲を照らして
とぎれとぎれの 心細い街灯を にじませている

昼でも閉まっている商店街には、
野良猫の姿もない

凍える自分の足音だけが 
風に巻かれる新聞紙のように 道をこする

だれもいない 
置き忘れられた 町

前触れもなく 家と家の間 
古い線路を
貨物列車が疾走する

耳を覆いたくなる悲鳴
 鉄の車輪と錆び付いたレールが
激しくせめぎ合う 雷光にも似た火花

傾きかけた廃屋を揺らし
私を巻き込もうとする
鉄の臭いのするつむじ風 

暗闇に 街灯を反射する 
様々な色や形が 
町を モノトーンの背景に追いやる

いつまでも いつまでも
途切れない 貨物
もしかしたら 運転手さえも拒む 
無機質で 冷たく 荒々しい論理 
 
凶悪な獣の呻きをあげながら
駆け抜けて 
再び 無為の中に私を 捨て去る

轟音に麻痺した聴覚を
静寂の痛みが 襲う

街灯の下 私の影が
夜道のしみのように 動かない 


自由詩 静かな夜半のことだ Copyright いねむり猫 2016-01-24 18:39:40
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