そのような 澄みきった真実
いねむり猫

私のメガネのレンズは いつも薄汚れて 曇っている

ポケットに入れた手が掴んでいる しわくちゃのハンカチでも
はーっと息をかければ 少しは明るくなるのに

足元は 
山深い森の落ち葉
深く 深く 山を 覆い 
雨を吸い 腐って 寒さに乾き 
また新たな 青葉と紅葉を積み重ねる
 
私の足は 山に包み込まれて どこからが足なのか わからない
どこまでも 柔らかな 戸惑いの中を 歩いている 


いつか 
すべての葉をふるい落とした
たくましい けやきの樹の 
四方から空間を 掴み上げる 太く険しく素直な 枝ぶりのように
冬空の青に くっきりと浮き上がる 真実が
私に 一気に与えられる なら



時刻表のないバス停で 
行き先の書いていないバスを 待っている 

小川を流れ下る 落ち葉のように
私たちは 蛇行する偶然と 流れの必然に 
ただ 身を任せているしかない


いつか 自分の思考が 澄み渡る そんな瞬間が来たら
向こうから やってくるのは
きっと 一つの風景なのだ


なだらかな秋の丘陵に 夜明けの光が 運んでくる
色彩と 陰影と 小鳥たち
すみれ色から ゆっくり青へと変わる空と 風
黒く うずくまっていた
一つとして同じ色のない 森の木々の葉が 
小さな身震いをする 朝


世界が すでにそうであるように

ただ その姿をそのまま見つめることができること

そのような澄み渡った思考が 私に訪れるとしたら


そのような 自分のあり方を
この 冬空の青に 刻印する


そのような 澄みきった真実


自由詩 そのような 澄みきった真実 Copyright いねむり猫 2016-01-10 18:31:27
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