異端
レタス

背徳の烙印を額に捺された巡礼者の列は
埃にまみれた長い路を促され
静かに歩みを進める
誰も言葉を発する者は無く
無言で己の魂と静かに語っていた

遠くに霞む溶鉱炉のサイレンだけが静寂を乱し
黄色いヘルメットにグレーの作業衣に身を固めた邏卒に
彼らは其処かへと引きずられて往く

散水車が時折水を撥ね
彼らの暗い装束を汚していった

教皇に烙印を捺された人々の諦めはあまりに深く
誰の表情にも希望の色を滲ませる者は無かった

鋼鉄の扉に邏卒が迎え
彼らを導き入れる
長い階段を昇り詰め
天上近くのステージには
オレンジ色の影が揺らめいている

それでも彼らの面差しは鋼色のように青く
その瞳も色を映すことは無かった

ステージに立つ邏卒は特に屈強で
胸の番号を確認し
もの言わぬ彼らを次々と溶鉱炉に落とし込む
彼らは飛沫を上げる間も無く
溶けたオレンジの鉄の中に沈んでいった

溶けた鉄は巨大な列車に載せられた釜で
圧延工場に運ばれて
鋼色の薄板に延ばされ
自動車のボディに加工され
再び世間を青く徘徊する

彼らには天国も地獄さえも往く場所は無かった


自由詩 異端 Copyright レタス 2016-01-06 17:56:16
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