光の歩行者
木立 悟





右手に枯花
左手に造花
冬の雨と骨
水の径のひとつの影


陽の無い朝
海を照らす目
壁に描かれた
絵に消える羽


遅い午後
遠いはばたき
原に散らばる
光の音


夜の庭が赤く浮かび
少しずつ少しずつ薄くなり
雪にひらく手のひらになり
受け止め切れぬものをこぼしている


骨のなかから角を拾い
枯花を捨て 造花を捨て
枝と肉を繰り返す指は
やがてかがやきの爪を生やしてゆく


水の径から風は消え
小さなうたの痛みは増し
はばたくものらはすぎてゆく
みな寝静まる真昼の街を


再び響くはじまりの夜に
霧は霧にたちこめて
帰る場所のないものたちの
花と鉄の指を濡らす




















自由詩 光の歩行者 Copyright 木立 悟 2016-01-05 21:59:58
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