特別な場所
レタス
幼い頃には特別な場所が在った
古い石橋のたもとだとか
椿の大樹の根元だとか
石垣のちょっとした隙間など
ぼくはそんな処に
緑色や赤や青い水晶の欠片など綺麗な石を
お供え物のように隠した
そんな時には
何やら解らない呪文を唱えながら
死を恐れ
永遠を願った
先日の風邪で四日間何も食えず
眩暈をおぼえながら
妻は救急車を呼ぼうと言いだし
それだけは止めて欲しいと懇願した
ぼくはもう駄目なのかとさえ感じながらも
正月の救急には世話にはなりたくはなかった
あの訳の解らない呪文を想い出して
唱えたはずなのに
眩暈が治まった今はもう思い出せない
歩きながら特別な場所を探しても
いまはもうそれを見つけることも出来なくなった
濁ってしまった瞳では
聖地のような霊場のような特別な場所は
見つけられないのだろう