特別な場所
レタス

幼い頃には特別な場所が在った
古い石橋のたもとだとか
椿の大樹の根元だとか
石垣のちょっとした隙間など

ぼくはそんな処に
緑色や赤や青い水晶の欠片など綺麗な石を
お供え物のように隠した

そんな時には
何やら解らない呪文を唱えながら
死を恐れ
永遠を願った

先日の風邪で四日間何も食えず
眩暈をおぼえながら
妻は救急車を呼ぼうと言いだし
それだけは止めて欲しいと懇願した
ぼくはもう駄目なのかとさえ感じながらも
正月の救急には世話にはなりたくはなかった

あの訳の解らない呪文を想い出して
唱えたはずなのに

眩暈が治まった今はもう思い出せない

歩きながら特別な場所を探しても
いまはもうそれを見つけることも出来なくなった
濁ってしまった瞳では
聖地のような霊場のような特別な場所は
見つけられないのだろう







自由詩 特別な場所 Copyright レタス 2016-01-05 17:15:54
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