冬のこの日
たけし

晴れ上がり寒風吹く久々に冬らしい冬の今日
一晩苦しめられた疼痛発作に生きる気力萎え街をさ迷う

この街のあちこちに家族との思い出の染み貼り付き残り
歩けば歩くほどいよいよ無人の荒野に一人放り出されたなと虚ろな気分に包まれていく

けれど、

空を見上げれば何とも言えない清澄さ
太陽は中空に労を惜しまず輝き
天の青さはいつにも増して明度を上げ
冬の全ての光が薄い膜を透過して凝集し地上に届き
或る地に住み慣れようが住み慣れまいが
この天蓋に覆われた場所は何処も地球の大地
家族は消えても街は消えても垂直に立ち歩く独り独りの人の可能性に変わりはなく
のた打ち毒づき虚脱し
それでも腹の底から沸き上がる熱にいつしか横溢する愛の感情
生まれる限り進み昇ろうと
にこやかに笑って街角で手を振る何処かで見た若い娘と老人に
笑って僕も手を振り返す


自由詩 冬のこの日 Copyright たけし 2015-12-27 14:44:22
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