シルヴィ―の夢
ただのみきや

シルヴィーがよみがえる
花々が一斉に掻き毟られる
足ひとつの孤島が 点々と

シルヴィーが落ちて来る
貪婪なクジャクの爪
わたしは乾いたペンキ缶 

空間だらけの女から抜け落ちた
うすい冬の欠片 何事か描かれた
言葉による人格
三次元を象った
厚みのないパズルが解ける
吹き上げる冷たい息に
あなたの肺は他人
アポトーシスに飲まれ
裏返る 濁点の黒い月
懐柔の風のさざめきを
あなたの祭りのフルートが遮断する

数億桁のパスワードが虚無の海を泳ぐ

指先から生まれ
壊疽みたいに 
ぬるく燃やされて
――疼く 夜はわたしから流失する

石に翼が生えるころ
わたしはわたしを突き破り沈んで往く
言葉の届かない重力の終点へと

シルヴィーは再び死ぬ
手折られた白い腕 物憂げな首
目覚めの予感
砂漠を渡るひと脈のガラガラヘビ

子どもが泣いている
起点――距離はゼロ
言葉は目隠しする
あなたはもう眠らない



          《シルヴィーの夢:2015年12月26日》







自由詩 シルヴィ―の夢 Copyright ただのみきや 2015-12-26 23:28:50
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