爆買いの世紀
高橋良幸

静かな冷媒の音
誰かの企画が売買されている音
主張された封止のデザインを
ただ商品として見ること
喉の渇きを覚えるまえに
百円玉を入れること

なあ、ボタンが点灯するのに
あと10円足りないぜ
けど10円を入れても買いたい、
気持ちが足りないあなたはいったい
どのボタンを押そうとしている

飲みたくもないものを
気分の転換にもならないものを
喉が渇いたら買わなければならない
ものをつぎからつぎに路面へ
注いでいくのが

香料と着色が泡を立てて
混ざるのを見ているのが
いい気分ですか
もう口をつけられなくなった川が
向こうへ流れ、排水溝に落ちるのを見て
思い出しました

あなたとこんなことをいつかもしていた
私たちの前には棚があって、
販売機があって、籠があった
すごく欲しいわけでも無くてそれを買って
あの川、インダスの岸辺に書き残したこと
黄河の土手で石を並べたこと
小さな空きビンをまたその手が握っていて
文明は一度、終わったのではなかったか


自由詩 爆買いの世紀 Copyright 高橋良幸 2015-12-25 20:00:15
notebook Home