墨塗りの夜空
凍月




口に出して言えない心に
一体どんな意味があるだろう?
渡せない恋文で屑籠は溢れ
伝えられない言葉なんて
消えて無くなって終わりじゃないか
温めた卵を踏み潰して
醜い吐瀉物が見えるだけじゃないか
水を延々と火にくべていたら
気付けば蒸発しかけてるじゃないか
紙に綴った感情はもう
軽くかさばる唯の廃棄物じゃないか
ねえ僕の心の中見えるかい?
無理だろう
だって僕にも見えないじゃないか?
純粋が今では汚れて黒ずんでいる
片思いしていたと思ってたけれど
それも
巧妙に作られた虚構だったんじゃないか?


もしも真っ暗な夜空が見えたなら
それは書き殴られたインクの跡だ
文字で埋め尽くされたから黒い夜空
もしも真っ黒な夜空が見えたなら
僕が硯をひっくり返したってコトだ
墨で塗り潰されたから夜空は黒い
もしも夜闇に空が黒く見えたなら
それは炭化した手紙のなれの果て
空しく焦がれた後の焦げ跡の夜

墨液のような雨が降る夜、空は黒かった






自由詩 墨塗りの夜空 Copyright 凍月 2015-12-23 22:47:46
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