王の末裔
レタス

彼はとても静かに暮らしていた
職業は図書館の司書だった
毎日職場に行っては
本を分別し
新たに購入する本を検討する

静かに帰宅すれば
柔らかに妻が頬笑み
お疲れさまでした と言う
帽子を取り
コートを脱げば
温かな食卓の香りが鼻をくすぐる

手を洗い
食卓に向かう

その前にちょっとした儀式が彼の家にはあった
木箱からルビーの大粒を取り出し
妻と手のひらを合わせ
ころころと転がし
食卓を寿ぐ

ただそれだけが普通の家とは違っていた


自由詩 王の末裔 Copyright レタス 2015-12-21 20:43:13
notebook Home 戻る