ラムスキン
Lucy

ひと足歩くと メェ―と啼く
ふた足歩くと 
メェー メェー

やっと見つけた
あたしの足にぴったりの
ショートブーツ
シンプルでオシャレ
これからのシーズンにぴったり
気どり過ぎてもなくダサくもなく それに・・
綺麗で親切な店員さんは
笑顔でささやく
「ラムスキンですから。 
とってもやわらかくって
足に優しいでしょう?」 

聞きたくなかったな
恐ろしい言葉
この靴一足のために
一匹、あるいは二匹の子羊が
殺され、皮を剥かれたという事実に
あたしは急いで目をつぶる

もし目の前で
「あなたの靴を作るため今この子羊を
殺しましょう」と言われたら
あたしは即座に断るだろう
「可哀そうです、いりません!」って
だけど子羊は既に殺され
綺麗に鞣めされ磨かれた革は
美しい靴となり
お金を出せば買えるのだ

あたしは買った
ごめんなさいね子羊ちゃん
だけどあなたが死んだのは
きっとあたしのせいじゃない
メェ―メェ― メェ―メェ―
あなたの声は聞こえない

お金持ち達の野蛮な贅沢と毛嫌いしてきた
シェア―ドラパン・ロシアンセーブル
ベリーリンクス・ゴートスキン
ヌ―トリア・ビーバー・チンチラ・ラビット
ミンク・リス・フォックス・・・
世界各地で狭く窮屈な檻に入れられ
劣悪な環境で飼育され こん棒で頭を殴られあるいは
首をへし折られ
肛門から口へ電流を流されるなどして虐殺される
動物達のみならず
どこかの国の豊かさのため

殺される側は無視される

豊かさとはつまり
抹殺される存在に対する無関心そのもの


聞いたふうな思考を空回りさせ
風に紛れる
幻の泣き声を聞かぬふりして
かろうじて豊かなエリアであたしはスキップ
メェ―メェ―メェ―
ラムラムラム

行く手には
いずれあたしも入れられる錆びた小さい鉄の檻が
扉を開けて待っている




自由詩 ラムスキン Copyright Lucy 2015-12-21 20:38:51
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