閉ざされた夜
レタス

潮の満ち引きが鼓動と繋がっていた
あるときは優しく
或る時は激しく
わからないままに彷徨う姿は
赤や青に点滅する

夜中の踏切を渡ろうとしても
遮断機があがることはなかった
待ちくたびれて
屋台のおでん屋の暖簾をくぐり
熱燗を啜ると
踏切の点滅は止み
遮断機があがった

金を払い
踏切を渡ろうとすると
遮断機が降りてくる

仕方がないので
またおでん屋に戻り
熱燗をもう一杯
コンニャクとダイコンをたのむと
親爺は狐のように頬笑んだ

今夜は冷えますな…
親爺はにやりと口元をゆがめて
皿を差し出した
味の染みたおでんを頬ばると
遮断機があがった
急いで金を払うと
また遮断機が降りてくる

夜が明けても良い時間なのに
漆黒の空は変わることなく
狐のような親爺が頬笑むだけだった
わたしは自棄になり
熱燗と牛筋にツミレ 厚揚げガンモを頬張り
踏切を渡るのをあきらめた

潮の満ち引きが終わらないかぎり
踏切を渡ることは出来ないだろう
赤と青が点滅している


自由詩 閉ざされた夜 Copyright レタス 2015-12-13 05:58:23
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