朗読の講堂
マチネ

大きくはない講堂で
詩人の声がしている

詩人の声は講堂よりも小さく
低いところを這うように響くから言葉のつぶは分からない
絨毯だけが分かっている
水を吸い込む時のように、そこだけが深い赤となる

森の木はすべてわたくし
煤けた幕もまたわたくし

詩人の声は思い出す時の死者の声

講堂は文学館の中にあり
文学館は冬の中に
閉ざしてある木の扉を押すと 涼しさ

開かれて、息を絞りだした
幼い蒸気
吸うと
水の匂い

わたしの上に雪がつもり
じっとりと溶けてゆく

わたくしはこの雪のひとひら
わたくしは講堂のあの絨毯

風見鶏の音がして
振り返ると
もう冬のいかづちが迫っている


自由詩 朗読の講堂 Copyright マチネ 2015-12-06 01:20:59
notebook Home 戻る  過去 未来