くらい
管城春

触れるとつめたくてあたたかい
やみはやわらかい
しなやかに伸びる人工的な曲線
そのさきに灯るひかり
まるいほのおに囲まれている
漆喰はそれを反射している
揺れ踊る微細な動きに意味を見出すことはない
意識が溶ける
見えなくなる
いたみは隣人としてすぐ側にあって
疎うものではない
やみはいつもやわらかい
旋律が中空をただよっている
音はしばしそこにあって、それから溶けて消える
ひとのつくったくらやみのなかに
ひとのつくったあかりがともって
わたしたちは営まない
生活と乖離したはるか底の世界で
出会う幻影とゆびさきだけを絡めている
どこにでも行けるからここに立つ
目をとじる
まぶたの裏のやみには濃淡があって
ときおりひかりが過ぎ去る
まるく白を落とす
循環し流動するもの
とどまるもの
生命と躍動
静物
物体としてのわたしたちが力尽きるときに
地底は足に添える
つめたさが這いのぼりそこでできた道筋にあかりが灯る
道筋にあかりが灯る
連動する言葉も
惨めさも
気がつかないまま回りつづけている
それでも嘆くことはない
旋律が中空をただよっている
ピアノの音が聴こえる
ひかりが躍動する
この舞台は流転しても
道筋にあかりが灯る
それをしずかな場所からながめている
膝をかかえてここからあこがれていたい
とおいひかりを共有する
わたしの彼岸は
あなたのいる淵は


自由詩 くらい Copyright 管城春 2015-11-29 11:06:54
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