放熱
レモン

まひるの余韻が
からだに蓄積して
わたし
気怠く溶けてしまう

触れないゆびの熱が
くうき 揺らして
ざわめいてるのは
柔らかに開いた毛穴から踊る火照り
芯でくぐもる泡気は
微かな亀裂から
海馬の轟きになる

視線でなぞるように
わたし
緻密に侵されて
瞬きさえも
ふるえながら
ことばは愛撫を欲しがっている
陽炎のにおいにも似た茹だる血潮
わたしのなかを走って
走って
白く発光しそうだったから
このまま許して放ちたい


溶けてしまう
融けてしまう
ほどけてしまう
はだけてしまう
だれも知らないわたしの聖域
甲高いアリアと芳醇な蘇芳が絡まり饐え
腐敗し爛れた其の先に
繊細な不協和音の調和
ごうごうしいほど
細胞が
脈打ちながら
振動しているその聲を


いま。



ああ、
白夜の月が
消えてゆくよ
おそらくこれは白昼夢
渇いた夢遊の透せる
蜃気楼の




そしてわたしは裸で眠る


自由詩 放熱 Copyright レモン 2015-11-24 13:09:22
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