遮断機
あおば


空襲警報の夜
逃げ遅れ
群衆に踏みつけられて
押し潰された
松岡君のランドセル
遮断機の上にも拡がる空
雨の日も
上がったり
下がったり
忙しい暮らしの中で
溜息をつく暇もない
夕刻には
そそっかしい
オート三輪が打ち当たり
腕の一本もへし折られても
知らん顔して耐える毎日
そんな呑気な稼業ですが
米俵を担いだ盗人が
こぼした白米を
もったいないと
腰をかがめたときは
思い切り
首根っこを殴りつけた
奴は
ぐうの音も言わず
線路に倒れて
電車に轢かれ
血だるまになった

あれから何年
今日も株価のように
上がったり下がったり
夜には電車も来ないので
ぐっすり眠り
大儲けする夢を見る


自由詩 遮断機 Copyright あおば 2005-02-18 01:36:18
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