bird
レモン



黄昏色した髪の歌姫は
夜に目覚め
黒いドレスを身に纏い
ナイトクラブで唄っていました

安っぽい香水と目がチリチリするような紫煙と猥雑な嬌声に囲まれて
夜毎、淫らなうたを
唄っていました

僕は
弦が錆び音の狂ったピアノを弾きながら
彼女の声は愉しげに笑っていても
彼女の瞳がこっそり泣き出しそうになる様を
なんだか沈んでゆく太陽のように視ていました

ある夜、彼女はいつにも増して狂おしく

   『ねぇ、私の夢は
   (お願いだから
   『あそこに見える
   (連れてって
   『あのきらきらした
   (あのきらきらした
   『高い塔のてっぺんで
   (そらにいちばんちかいところ
   『どこまでも澄み渡る
   (ソラニ、イチバン、チカイ、トコロ、
   『あおぞらを歌うことなの
   (唄いたい歌いたい、、、



だから僕は彼女を誘拐しました


解き放たれた彼女は
荘厳なアリアを響かせたあと
金色の鳥に姿を変え
夜の彼方、暁迎えに



飛び去っていきました





自由詩 bird Copyright レモン 2015-11-16 20:51:15
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