二月の森
ベンジャミン
さくさくと軽い音をたてながら
生きものたちの影を求めて歩きました
胸いっぱいの冷たい空気を吐き出せば
白いけむりの中に春が見えないかと
苔にすべってつかまった木の肌は
渇いた鱗のように剥がれて
まるで寒さに泣いているようです
二月は
終わりと始まりの境目を
急いでわたる風のようで、いつも
気持ちが吹き上げられている気がします
舞い上がればどこまでも行けそうなのに
からだという器にとらわれてしまって
あたまのてっぺんからつまさきの間を
上下するのがせいぜいです
森は
空を隠すように枝をひろげても
見上げるものにはわずかばかりの陽光を
たいそう大きく見せるので、それは
自分のために降りそそいでいると思ってしまう
落ち葉は深い沼のように
地中へと引きずり込もうとします
歩をすすめ、立ち止まらずにいることが
唯一、今にとどまる方法です
そんな森の中を、歩いてゆきます
奥へ、奥へと
生きものたちの影はありません
舞い上がるほどの風も
吹いてはくれません
二月の森は
ただ
奥へ、奥へと
沈むように続いているばかりです
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テーマ詩「月の詩(ウタ)」