境界の意識
たけし
図書館の広々としたロビーの椅子に
ぼんやりと座っている僕の意識は遮断されたまま
透明に奥まっていく
ざわめく隣の喫茶エリアからの人々の話し声が
ロビーの高い丸天井に反響しながら
立ち昇っては残響し消えて行く―後から後から
建物それ自体が午後の静けさに浸り
ガラス壁越しの樹木の葉群れの濃緑が
秋晴れの空白に映え艶めき
静謐な気を司り
僕はゆったりと午後の時の流れに解放されていく
部屋の寝床では朝まで荒かった呼吸も
今はいつしか穏やかさを保ち
遮断されたまま朦朧とした僕の意識が
いつのまにか高揚する予感で充満している
静かに 静けさに包まれ
慢性的な眼底痛に耐えながら
あの が口を開くまで待つのだ
<キオクの億を掻き分け掻き分け
記憶の底を引き裂いて
内なる神聖未知
顕わ光輝き響きに充ち>
平静を保ち沈潜し
流れ込んでいくまで脱力弛緩
意識は畏怖を以て途方もなく覚醒し
遮断が浄化され解かれるまで
静かな時の流れに
身を委ね預け続ける
穏やかに飛翔して
穏やかに飛翔して
木霊し合う調和の音楽が 聴こえる