生贄
レタス


天を突く壮大なプラントのサイレンが鳴り
ぼくたちはトボトボと歩みを進める

酸とアルカリの狂騒曲にもめげずに
ぼくたちはトボトボと歩く

たどり着いた溶鉱炉は
オレンジの秋の空色だった

一人ずつ
順番を待ちながら
囁くことも無く
溶けるのを待っていた

空から降ってくる
歓喜の合唱を胸に抱きしめ
溶けてゆくのを待ち続ける

それは不協和音のはずなのに
ぼくらは誰も気づかない

地獄の門は開いているのに
永遠という
甘い言葉を彼らは
遠いサイレンに隠していた




自由詩 生贄 Copyright レタス 2015-10-27 23:09:36
notebook Home