コール
高橋良幸

いやだいやだ、こわいなあ、こわいナァなどと
怪談ばなしのように唱えていた矢先に
とはいえ、季節は残暑で
玄関が雑然としていたのをきっかけに
勢いをつけて飛び越えてしまったがため
ついこの世界にチェックインしていた
つい、多世界のひとつにチェックインしていたのだった

かかとの位置がどうもちがうらしい、のだろう
なにせ原子核が崩壊しても姿を見せないままだった
野良の猫が生きているのか死んでいるのかは
パブロフの犬も訊ねるまで反応の仕様がない
ときの政府が解釈をするまで、
国語が読めない国民によく似てる

さいを投げ終わってから目がでるのだったか
火の元と戸締りを確かめてから家を出たのだったか
気づいた時にはもう遅いという歌のバリエーションを
いくつもの世代が歩道と歩道橋とで耳にしていた
空腹に対応する文字を自ら列挙せずとも
そのように市街はできているように見える
ほら、胃袋を看板にしたようななかにも
ああ、ちゃんと人が集まる理由を
提示してあるのが見えるでしょう

歩く、最中にコールする
黒を白に換言し、あからさまなルビをふり
声に出しても、印刷に出しても、「重ね合わせ」されたページの本音の裏に
コペンハーゲン的な為政者の観測を待つしかない
なにせ、ほら、信用ならない、
至高の建前を抱えたままだから君の言葉は
どんな鬨の声のうしろを尾いていこうか


自由詩 コール Copyright 高橋良幸 2015-10-26 20:12:41縦
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