迂回路と虹
木立 悟





窓の内を飛ぶ鳥が
ますます大きく ますます遅く
重なる紋を浴びながら
粉の光を泳いでゆく


触れることなく覆う雨
横へ横へすぎる雷鳴
見え隠れする鳥たちの
波ばかりが打ち寄せる


在る屋根 無い屋根の上
青でも白でもある空の網
互いに互いを払いあう風
螺旋に螺旋に昇る午後


森のほつれから来る羽の
沼の水に映らぬ姿
常に何かを言いたげな牙
まばゆい鉄から剥がれ落ちる色


細く遠い列車の音が
読まれない手紙のように降り積もり
暗く暗く高い空の
つづく限りを照らしゆく


深みどりの光の脂が
抄おうとする指からこぼれ流れて
伝わらぬものを伝えながら
伝わるものを断ち切ってゆく


走りつづける列車の窓から
鳥も粉もあふれあふれて
天気雨の反対にある
双子の午後をはばたかせてゆく



















自由詩 迂回路と虹 Copyright 木立 悟 2015-10-26 09:08:46
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