迂回路と虹
木立 悟
窓の内を飛ぶ鳥が
ますます大きく ますます遅く
重なる紋を浴びながら
粉の光を泳いでゆく
触れることなく覆う雨
横へ横へすぎる雷鳴
見え隠れする鳥たちの
波ばかりが打ち寄せる
在る屋根 無い屋根の上
青でも白でもある空の網
互いに互いを払いあう風
螺旋に螺旋に昇る午後
森のほつれから来る羽の
沼の水に映らぬ姿
常に何かを言いたげな牙
まばゆい鉄から剥がれ落ちる色
細く遠い列車の音が
読まれない手紙のように降り積もり
暗く暗く高い空の
つづく限りを照らしゆく
深みどりの光の脂が
抄おうとする指からこぼれ流れて
伝わらぬものを伝えながら
伝わるものを断ち切ってゆく
走りつづける列車の窓から
鳥も粉もあふれあふれて
天気雨の反対にある
双子の午後をはばたかせてゆく