秋の手紙
塔野夏子
ひんやりした空気の漂う
澄明な秋のゆうぐれである
蓼のべにいろ
野菊のうすむらさきが
ふるえながら空へと
にじみあがるのである
この小径をゆくと
わたしの肌にも
それらのいろが
ふるえにじんでゆくようである
この手の中で投函を待つ
手紙の中から文字たちが
澄んだ空へと立ちのぼり
すきとおり消えてゆくようである
自由詩
秋の手紙
Copyright
塔野夏子
2015-10-17 22:07:54