名残。
梓ゆい

居間で胡坐をかく父の姿を
時折見る。

(死んだはずなのに。)と思いながら
「お父さん。」と声をかけた。

(父はただ、静かに背を向けている。)

そこにいるだけでいい。
そこにいてくれるだけでいい。

「その事がありがたく幸せだ。」と
お骨になって帰ってきた直前
痛いほど理解をした。

何も言わなくていい。
何も語らなくていい。

ただただ
「お父さん。」と
呼びかけるために・・・・。


自由詩 名残。 Copyright 梓ゆい 2015-10-16 01:07:52
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