いちばん
アンテ


自信家なわけじゃない
ただ
たぶん大丈夫
って予感は当たったし
きっとうまくいく
って根拠もなく信じて生きてきた
あの頃には
もうもどれない

昔むかし
あるところに
王子様がいました
傷心の旅のとちゅう
通りがかった村の小娘と結ばれて
地位も財産もすてて
いつまでもしあわせに暮らしました
とさ

いやいやいや
小娘おそるべし鈍感力

虎の巻でも落ちてないかな
なんてバカだった
あいつの過去なんかのぞき見たむくいだ
あんなにかわいくて
なんでも持ってる娘
だったなんて知らなかった
わたしはわたし
だとか
はるか彼方の
夢のまた夢

いちばんになりたいって
思うのはまちがいなのかな
勝ち負けとか
だれかのものだとか
どうすれば笑ってもらえるとか

ありのままとか

どうして別れたの
フったの
フラれたの
どれだけマネしたって
わたし
あの娘以下なのに

あの娘も
もっと過去のマネをして
失敗したんだって
ことにしよう
そうしよう

村の小娘だって
いちばんになれたんだ

今日はなんとかうまくいった
明日のことは
また明日にしました
とさ

いやいやいや
わたしおそるべし正念場


「Poison」 #32
inspired by ぽわん 「マイナーガール」



自由詩 いちばん Copyright アンテ 2015-10-05 23:43:52
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Poison