ふるる

丘に寝そべっていた少年が
組んだ足の先で 空を横切る電線を踏む

はりつめていた空は ぴりりと裂けて
へき開し
裂け目の奥からふうわりと
薄紅や
橙や
菫色の花びらが
うっとりと目を閉じたまま
舞い降りて

道行く人は
呼ばれたように空を見る

冬眠中の母熊は
ため息と寝返り

花屋の夫婦は
久しぶりに外で食事

酔っ払いは
酔っ払いのまま

泣いていた少女は
肩に降りた花びらをしばらく眺め
また泣き始める

あなたは
萌黄色のブックカバーを外して
花びらを栞に
なんてことは思いもしないだろうけれど

雪に覆われた
あの白い坂にも
花びらは散り

彼女らは少年の家の窓にも
多く飛び込む

花の香りが嫌いな少年は
顔をしかめながら作業を続ける

下ろしたての鉛筆を削る
軽やかな音が
少年の手からこぼれる











自由詩Copyright ふるる 2005-02-15 21:40:04
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
◎◎◎ほのぼの系◎◎◎