帰宅部部長
イオン

「採用にあたって、残業はできますか?」
「はい、もちろん体力には自信があります」
「そうですか、高校時代はどんな部活動を?
「いえ、高校時代は帰宅部の部長でした」
「帰宅部に部長がいる訳がないでしょう?」
「はい、まぁ、よくそう言われますが
 私の高校は本当に帰宅部があったのです
 帰宅して自分の趣味に没頭して
 それを文化祭で発表していました」
「あなたはどんな発表を?」
「一年生はサッカー部でしたので
 二年生の時はロックバンドと楽器の系譜
 三年生ではスキーウエアとライダーウエアの相違です」
「なるほど、なぜそのような題材を?」
「取材して系統立ててまとめることが好きでしたので」
「でも、その能力を当社では活かせないかもしれません
 会社も帰宅部では困るのですが」
「はい、でも仕事だけは創造性が高まらないと思います」
「それは、解っています。バランスが大切ですよね」
「学業と趣味の両立ができているか
 趣味を進路にどう結びつけるか
 毎日部員の相談に乗りました
 帰宅部部長が帰宅できないという皮肉な目に遭いました」
 それじゃ、どうでしょう残業が主たる仕事になりますが
 当社では帰宅したまま出社できない社員を
 どうにか活用できないか悩んでいたのです
 帰宅部の部長というポストで
 新しい仕事を創ってみませんか」
「えっ、はい、解りました」
「しかし、三か月で成果が出なければ
 帰宅したまま出社しなくてもいいですよ」


自由詩 帰宅部部長 Copyright イオン 2015-10-04 13:46:03
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