あげぞこ
為平 澪

「下を見て暮らしなさい」
下には下が、
その下には下がいるということを
赤いちゃんちゃんこを着た人は
底なし物差しを振りかざす

下を見て暮らしていけば辿り着く
プラスチックの上辺の底に
仕組まれ、敷かれた 悪知恵を
貪り食べている人の
一番おいしい、「鰻の蒲焼」

   (その、舌で味見、
   (その、下で笑う、

「上を見て暮らしてみたい」
言い返す制服娘の反抗は
社会を上下で板挟み

   (底辺、でもなく かといって、
   (上級、でもなく、かといって、

底上げされたくらいの言い争い
底上げしたくらいの世界

四角四面 めくらめっぽうな闇の中
母と私が 箸で突つけば
空っぽの器から どこからともなく
痛そうな音



自由詩 あげぞこ Copyright 為平 澪 2015-09-29 23:50:05
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