ミッキーマウスの耳は横を向いても重なったりはしない
末下りょう



夏にディズニーランドで買ったロンTをノーブラで着てる
きみってさ、いつもひざ怪我してるよね
たぶん毎回おなじなにかにぶつけて
探偵ナイトスクープみたあとセックスしたがるしさ
局長の涙がそうさせるのか
ハートスランプ二人ぼっちがそうさせるのか
鳩の迷信行動みたいなものなのか
地図に弱いのはわかるけど
電車の乗り換えができなくて 立ったまま寝るよね
世界の広さがわからないからって言い訳してさ
わざとなのかなってうたがったりもしたけど
そうするとぼくの知らないぼくの秘密をみつけられて
うやむやにされて 鳩の寝ぐせを眺めてる
わたし骨盤せまいのっていうから
腰をギュッとつかんでみつめたら
すごく白い目でみるよね
かまわず髪のなかに顔をうずめると
そこでいつも道に迷って きみを見失ったりする
たぶん見失うからいっしょにいれたりもする
瞳を大きくしても 肌に色がついても
ミッキーマウスの耳はいつまでも重なりあわないよ
ふたりに先がないのをしってるきみをずるいとは思わない
きみはなにも言わない
どこかで重なった線はすぐに離れて遠ざかっていく
ちいさな点をそこに残して 風もないのに手を振って
それはさみしくてきっとすてきです
奇跡がふたつ続いて どうでもよくなるまえに
特別なものにしよう
鼻先にみつけた耳に噛みつくとぼくは
さかしらなピラニアになり
口のなかの髪の毛が 絡まったふたりをほどいていく
ミッキーマウスは真っ白な手袋で真っ黒な手をいつもかくしている
その孤独にくらべたら
ぼくはまだなにも守るものがない
ミッキーマウスのまるい耳はどこを向いても重ならない
適切な距離をいつまでもそこに補完している





自由詩 ミッキーマウスの耳は横を向いても重なったりはしない Copyright 末下りょう 2015-09-26 16:15:32
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