彷徨反射
本木はじめ

いつまでも臨戦状態てのひらを開かないから握れないのよ


なにもかもこぼれてしまうふちのないコップをさがすいまもぼとぼと


パラシュートやんわりひらく恋人と喧嘩した夜はなすこのひと


卵から孵ったばかりの白鳥のヒナに問いかけ続ける美とは


夕映えに影絵となりて佇んだブリキのおもちゃのようなさみしさ


待つとゆう行為自体が人生か世界が今日も約束やぶる


蛇口から毒があふれてがぶがぶと飲み続けているみたいよまいにち


給水塔清掃員から渡される黒い鴉がくわえる指輪


畑には知らない花が咲きそろいそろそろわたしが枯れゆく季節


窓際で見下ろす路地の泥酔者つまりわたしはあなたの幻覚


脊髄が適合するほど僕たちはきっと会えない唯一のふたり


富士の樹海さまようようなひかりなら失う前に抱きしめるだけ






短歌 彷徨反射 Copyright 本木はじめ 2005-02-14 22:27:55
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