秋の魚あはれ
yo-yo

木の葉が
風に散っていく
表になり裏になり
葉脈の流れをとめて
秋の波紋がひろがっていく

セコと呼ばれる河童が
山へと帰っていく季節だった
雨が降ったあとの小さな水たまりが
河童の目ん玉でいっぱいだった
その道を
山から川へと帰っていく人もいた
その人は
一枚の葉っぱが
魚に変身するのを見たという
美しい魚だった

エノキの葉っぱが魚になったので
エノハと名付けられた

水が激しく落ちこむ瀬に
大きく竿を振って瀬虫を放りこむ
手元にぐぐっとくる動きを引き上げる
しびれたように痙攣しながら
あはれ銀色の魚体が
宙を泳いだ

一瞬の秋が落ちる
そのとき
釣り人の手に残されたのは
色あざやかな
一枚の葉っぱだった







自由詩 秋の魚あはれ Copyright yo-yo 2015-09-11 18:20:47
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