チェリー
アンテ


大恋愛
運命の出会い
がいつか訪れるだなんて
それこそ
甘いエロい妄想

我こそは
高値で取引されて
店先で垂涎の的
きっと素敵な人が買ってくれる
心ゆくまで味わってくれる
にちがいない
なんて
チェリーは今日も風にゆられる
実はとうに
ピンク色を通りすぎて

果樹園の木で育った
銘柄は
手塩にかけて
手間ひまかけて
熟れるまえに摘み取られて
ちょうど食べごろに
買ってもらえるよう
箱のなかで眠っている
なんて
知りもせずに

下で口を開けて待っているのは
お腹をすかせた獣たち
枝から手を離しちゃ
ダメダメ
ダメ だよ
食い荒らされて
種だけになって
土に還るだけ
運が良ければ
そこで芽を出して
木になって
枝で育った実が
同じ目にあうだけ
くり返すだけ

このまま枝にしがみついて
鳥がついばんでくれれば
せめて種は
遠い知らない場所へ
運ばれて
そこで芽を出して

やっぱり
同じくり返し

夢見るくらいは
許されるはず
太陽の陽射しをあびて
一心不乱に成長して
美味しい果実になって
運命の出会い
がきっと訪れる

そんな理想

あんなことや
こんなこと
がかなう日が来る

なんて妄想


「Poison」 #26
inspired by ぽわん 「チェリーボーイ」




自由詩 チェリー Copyright アンテ 2015-09-10 01:30:27
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Poison