ムシと言えば…
イナエ

ムシと言えば…

小学生のとき、有名な昆虫博士のお話を聞いた。
日本では 蜘・ムカデ・蛇にトカゲ・ノミ・虱など 小さな生きものをムシといったけれど ここでは昆虫のことを言います。では、昆虫とは何だろうね。
  (ボクらは口々に言う)
  「トンボ カブトムシ ハチ 蚊 ウジ…
  「ウジも? 
  「ウジ虫っていうだろ だから ムシさん
いいこと言うねえ。うじもむしさんだよ。
むしを漢字で書くとどうなるかな。
  「こんな易しい字… といいつつ 虫 虫 虫と書く。
けれども 先生は黒板に大きな字で書く。
六 四 三
  「ええっ ロッピャクヨンジュウサン?

(先生は声を潜めていう)
ここだけの話だけどね。コンチュウって読むんだよ
  「じゃあ 書き取りテストに出たら 六四三 って書いて良いですか?
それはだめ ここだけの話なんだから…
何でコンチュウって読むか ここに居るみんなにだけ教えちゃおうか
虫さんと学校の先生には聞かれないようにしてね
  学校の先生は 壁の前に立てかけた虫取り網のようにずらりと並んでいる。
  そちらを見てボクらはクスクス笑う。
あしが六本。はねが四枚。からだが三つ…
   「からだはひとつしか無いよ 
そうかなぁ 皆がつかまえてきたトンボやハチをよく見てごらん 
   「あ 三つに分かれてる
もうひとつ 四つのことがあってね
お蚕さん飼ってる子は知ってると思うけれど、
卵・蚕・蛹 そして蛾になるだろう 

 見事な定義に、ボクら幼虫はすっかりとりこなっていた
 そのあと ゴキブリを食う地方の話やその調理法
 高貴な方にコオロギを食べさせた話などすっかり信じてしまったのだ

数日後 クロバネゴキブリを何匹か捕らえて母に渡した
そのときの母ときたら…


自由詩 ムシと言えば… Copyright イナエ 2015-09-08 11:31:05
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