腐った林檎は誰も拾わない
日々野いずる

口約束で
作り上げられた 甘さは
おたがいに溺れるような
沈んでいくような
そんなすばらしい沼

底なしの許容だけがあり
腐り落ちた水菓子は叱られることもなく
じわり果汁を滴らせている
どこにも行けない水たまり
芳しい香りをさせている

痛んでも優雅なあなたは
ロータスの華を存在に添え
咲き誇る花弁をまとわりつかせていた

あなたの無責任な大丈夫だよに
騙され
痛んだ体で汁を滲ませるばかりの私
何も持ってないから
腐っていくばかりで
これでいいはずもなかったのに


あなたは大丈夫だよと未だに微笑む


それにまた安心し騙され
生きてられないはずの醜さで
生きるしかなくなる

これは罰なのだろうか
腐った体でずぶずぶと沈んでいく
埋まり切った暗闇は静寂で
安穏として抱かれた


自由詩 腐った林檎は誰も拾わない Copyright 日々野いずる 2015-09-05 20:26:54
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