大昔のこと、夜のパレード
またたび八寸

笠間駿介さんという人がいて
その人の作品が好きだった

青空は何枚もプリントアウトして
ことあるごとに読み返していた

今でもあの頃の詩人たちのたくさんの
プリントアウトされた詩が
僕の手元には残っている 
紙にしておくといつでも読めたからだ

多分皆若かったのだろうな
通信料は夜に安くなるから
皆集まるのは11時過ぎだった

たわいもない話、好きな本、
音楽、専攻のこと、漫画、旅、
薄暗い部屋で発光する画面に
夜食片手にチャットしながら、
この向こう側にも
画面を見つめる顔があるんだな、
と思いながら、互いの
PCメールに長文送りつけあい、
自慰のような批評を繰り返す

夜に文字が駆け抜けていた

一人暮らしの狭い部屋で
僕は大量の文字に埋もれていて
隙間から立ちのぼってくる
書き手の怨念みたいなものを
手で祓いながら、素敵なものを
より分けて、プリンターで
紙に落とす
ガチャガチャ音をたてて
あの頃、
僕らのパレードはいつだって
楽しげに続いていたんだ

*****

手を握って、飛び降りて、
着地して、駆け出して、
誰にも言わない秘密、
僕は詩を書いて、読んで、
白い紙を、
印字された黒いフォントを、
溶けてしまうくらい、
眺めて、泣いて、
笑って、怒って、楽しんだ、
夜の中、夜のパレード




散文(批評随筆小説等) 大昔のこと、夜のパレード Copyright またたび八寸 2015-09-04 21:27:28
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